忍者ブログ
不謹慎系フィクション医療ブログ
登場人物

豚児(とんじ)
 
生真面目な内科医。ヘブンズドアホスピタルの面々に翻弄されるかわいそうな人。

黒金(くろがね)
 
金髪ガン黒内科医。基本的に根性が悪い。 一方、面倒見が良いとも言われるが...

日野原重明(ひのばるじゅうめい)
 
ヘブンズホスピタル院長。 "あの人"に似るが全くの別人。 当年100歳の矍鑠たる翁。 座右の銘は"逝きかた下手"

有瀬太(ありせふとし)
 
モノ忘れ外来担当医。老練な診察は受診者に勇気と希望とをもたらす。

救急部長
 
明るく鷹揚な人柄で、部下から慕われる救急部のリーダー。無尽蔵の体力で日夜診療に当る好漢だが、困った一面も。

羽田直通(はねだ なおみち)
 
ヘブンズドアホスピタル内科部長。クセのある部下に悩まされる苦労人。

愛嬌ミチコ(あいきょうみちこ)
 
マジメで世間知らず、そして愛嬌がウリのテヘペロ女医。大富豪のお嬢様。

田原正直朗(たわらしょうじきろう)
 
ヘブンズホスピタル外科部長。大変おおらかな性格。真摯な診療態度からついたあだ名はDr. Honesty。信条は「嘘のない医療」

酒井 和民(さかい わたみ)
 
救急部レジデント。威勢の良さは某居酒屋並み。救急部と居酒屋と、ブラック業種つながりでは決してないんだから勘違いしないでよね!

鬼龍院花子(きりゅういんはなこ)
 
外来ナース。このご時世にナースキャップ着用を墨守する。笑顔で業界用語を連発する。愛読書は『実話時代』
ブログ内検索

カウンター

[21]  [20]  [19]  [18]  [17]  [15]  [14]  [13]  [12]  [11]  [10
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

9ba669cc.png

前回(眠られぬ当直(よる)のために5)のつづき

胎児の障害が理由の中絶を認めること(胎児条項)は、障害者を無用の存在と公的にみなすことに繋がり、周囲のそういったまなざしは、障害者の自尊感情を損ってしまいます。

e12d2a92.jpg
でも...
いま生活している障害者に対して
実体的な不利益を与えないのは間違いないっす




と彼は言いますが、出生前診断により障害児の出生が減少すれば、

7e34dc43.jpeg

つまり出生前診断と中絶とによって
ダウン症や二分脊椎などの障害者出生が減れば
既存の治療やケアのリソースが失われる
ってことさ




c23fbe4f.jpegそうだ
しかも一度失われたリソースを回復するのは難しい
生きる権利の保障は、空手形を振り出すことじゃない
治療・ケアの質・量が乏しくなれば
実体的不利益を与えることになる



ことが判りました。これは出生前診断先進国・イギリスで実際に起っていることだといいます。坂井律子(著)「ルポタージュ 出生前診断―生命誕生の現場に何が起きているのか?」によると、

アリソンさんは、医学者の考え方やその開発した技術によって、明らかに二分脊椎の人たちに「不利益」、それも「いま生きている人たちの命をも脅かす不利益」が降りかかっているというのである。患者の数が減ることによって、医学の主流ではなくなり、新人医師が育たなくなっているという...エジンバラ大学病院で二分脊椎の病棟を探したが、「昔はあったが」と言われ、見つからなかった。
(第六章 生と死の選択 196ページ)

「客観的な数字として二分脊椎の専門医が何人減ったか、というデータは持ち合わせていません。しかし、現場で二分脊椎を診ている医師も、アリソンさんと同じように感じていますよ」と語る。
(第六章 生と死の選択 196ページ)

7e34dc43.jpeg
イギリスではもう10年以上前に
実体的な不利益が生じているようなんだ
そして、治療やケアの技術が失われるだけでなく
もしかするともっと根本的なところで
大きな変化が生じていないかと指摘しているよ




さらにアリソンさんの話は、注意深く聞くと、もうひとつ重要なことを提示している。そもそも「二分脊椎の子は救命するにあたらないとした、ローバー※1の考え方とスクリーニングの技術躍進」は「死の技術であり、哲学だ」と言っている。「治療しなくてよい」、「中絶してよい」という考え方が現実になったことで、医療現場に「治療しよう」という意欲が失われているのではないか、生命観が変わったのではないかとアリソンさんは言う。
※1 ジョン=ローバー:二分脊椎児の治療・リハビリに当ったイギリスの小児科医。予後の良くない児を治療しない、選択的治療停止の基準(ローバーの基準)を発表した
(第六章 生と死の選択 197ページ)

障害を理由とした中絶などにより障害児の出生が減れば、自尊感情の破壊や蔑視だけでなく、実体的な不利益をもたらすことが判りました。個人の選択が他者の利益に関るということは、単純に選択の自由やプライベートな問題といって、済ませられないことかも知れません。











3da05c8b.jpg

カップルの決定が他人にも影響を及ぼすのなら
個人の自由、プライベートなことと言い切って良いのかどうか
うーん、ちょっと迷うっすね......


 

4c8a6dca.jpg

しかも負の影響は弱者の方に不利よ
圧倒的にね



 

3da05c8b.jpg

だったら
出生前診断と中絶は禁止?



 

c23fbe4f.jpeg

まあその前によ、障害の実態を知っとくべきじゃねーの?
良いも悪いもfactからだ





7e34dc43.jpeg

 


じゃあ話題になっていたダウン症候群について
実際はどうなのか見てみようか



 

1a10b0fe.jpgダウン症といえば顔貌が特徴的ですけど
一人一人はかなり個性的よ
あと乳児期に生命を左右する疾患は
心内膜床欠損などの先天性心疾患に呼吸器感染症
鎖肛・ヒルシュスプルング病といった消化器疾患ね


 

3da05c8b.jpg


みっちゃん、よく知ってるね
僕は全然ダメだ...



 

242a535c.jpegおめーわ何も知らないで
出生前診断や選択的中絶を語ってたのかよ
まあ上司が
b7966239.jpeg
アレでは仕方ねーか...

 

7e34dc43.jpeg

そのほか、難聴や先天性白内障・屈折異常
環軸椎亜脱臼、てんかんなどのケアも必要だね



 

1a10b0fe.jpg


あと知的障害や発達障害、適応障害
肥満になりやすいので、そちらのケアも


 

e12d2a92.jpg


いろいろあるけれど
ちゃんとケアすべきことがわかってるんだ


 

c23fbe4f.jpeg

そういったケア資源もな
ダウン症の出生が減れば、失われる可能性があるんだよ
今はまだその筋のプロがいるけどな


 

8090e75d.jpeg


よく言われることだけど
ダウン症の子は人懐っこくて可愛いんだよ



1a10b0fe.jpg

ダウン症の合併症に対する治療やケアが
進んだお蔭で、長く生きられる人が増えたわ
そのためか、アルツハイマー病も問題になってる




7e34dc43.jpeg

ダウン症に起るアルツハイマー病は早発でもあるしね
35〜49歳で8%、50〜59歳で55%
60歳以上で75%、平均54歳といわれてる



 

927c6049.jpeg


生命予後の改善あってこその問題点だな
ところでダウン症の平均余命はどれくらいよ?




e12d2a92.jpg

僕はわかりません(キッパリ





4c8a6dca.jpg


あなた本当にホームラン級のバカ




22995bbe.jpeg

ま、まあそれはともかく
National Association for Down SyndromeのHPによれば
平均55歳とあるね
60〜70代まで生きるとも




1a10b0fe.jpg
 

多くの人が苦痛少なく、人生を楽しむことができるのよ
世間のイメージとは違うの

 


e22576e7.jpeg
もちろん療育・治療は必要だけど
就労可能な人もいるし、有名なところでは
NHK大河ドラマ「平清盛」の題字を書いた書道家
金澤翔子さんがいるよ



e12d2a92.jpg


え、そうなんですか!
すごい!




927c6049.jpeg

おうおう、そりゃスゲーわ
スゲーけどよ
ダウン症のうちいったい何人が彼女のようになれんの?



f55e869b.jpeg

 

そりゃ、みながみな彼女のようにはなれません...
彼女は特別といえば特別ですが...




927c6049.jpegそれによ、傑出した才能がいるからって
それでダウン症をどうこう論じるのは
筋を違えちゃいないのか?
その論法じゃ、傑出した才能を輩出しなけりゃ
ダウン症の価値が低いってことになるのか?



 

3da05c8b.jpg


どうして話をぶっ潰すこと言うんすか?
せっかくキレイにまとまりかけたのに



927c6049.jpeg


バッカ野郎!
キレイな話をつぶさに見るとな
だいたい中身は腐ってんだよ
白く塗った墓のようにな

 



3da05c8b.jpgしかしですよ、治療と療育とが必要とはいえ
苦痛少なく人生を楽しむことが出来るっすよ
しかも寿命も長いっす
出生前診断で選択的中絶を選ぶことに
今の僕は躊躇してしまうっすね




927c6049.jpeg


その治療と療育とは十分なのかよ?
親が死んだ後も、誰かがちゃんと面倒みてくれんの?



4d292620.jpeg


今は十分でないにしても
それを求めていくのが我々みんなの務めでしょうし
今の制度が貧弱だからというのは
何か違うような気がします



927c6049.jpeg

でもよ
人は制度を変えるために生きている訳じゃないぜ
何度も繰返し生きられはしないんだからな
人はみな人生を楽しむために生きてるんじゃないのか?



22995bbe.jpeg
確かに人生を楽しみたいとは思いますが
障害ある子がいれば人生楽しめないとも思えませんよ
障害ある子は愛せない、人生を共に歩めないというのは
ペーフェクトベビー願望なんじゃありませんか?




8ad15a6b.jpg
じゃあ訊くがなぁ
生れた子をすぐに抱きしめることが出来て
親族の落胆の表情や、友人の気まずい雰囲気を経験することもなく
誰からもおめでとうと言われたい
そんな欲求は責められるべきなのかよ?



3da05c8b.jpg


それは...



c23fbe4f.jpeg
治療・療育に奔走して、疲労困憊するのは嫌だ
周囲の憐みと悪意と、そして善意の言葉に傷つけられたくない
すくすくと育つ吾が子と暮したい
入学、受験、就職、結婚、孫の誕生、そんな仕合せを味わいたい
この想いは贅沢品か?



4c8a6dca.jpg


出生前診断で判る障害は一部ですよ
成長過程で判る障害も多いし
ケガや病気で後遺症ということだって



4d292620.jpeg
そうさ
ごく一部の障害を知って、それを排除したところで
その後に起るすべての病気・事故が防げるわけじゃない




927c6049.jpeg
ほうほう、そうかそうか
なら予防接種なんて無意味だよな
ワクチン射ってもすべての病気を防げるわけじゃないから

ひひひ




4d292620.jpeg
それとこれとは話が違いますよ
病気と障害とは同列に語れない
予期せぬ者を迎え入れるというか
子どもを選ばないことを選ぶ、そういうことです



927c6049.jpeg

それは
パーフェクトマザー願望だな
マザーで悪けりゃペアレンツでもいい



4c8a6dca.jpg

先生はダウン症のことを真に理解してないんじゃありませんか?
親御さんはもちろん、ダウン症協会の人や療育担当者なら
もっと前向きだと思います!



e12d2a92.jpg
 

いいこと言った!





927c6049.jpeg


じゃあ最後に、長らくダウン症に携わってきた人の言葉を紹介しとくわ
あとは各々考えな
もう寝る
good night !

 



ある医療従事者の会合で、こんな発言を聞いた。「私は長年ダウン症の子どもと保健所で関わってきて、本当にかわいく、素直で、すてきな子どもだなと常日頃思っていたんです。でも正直に言いますが、私の姪が出産するときになって、障害児が生まれませんようにと、強く祈ってる自分に気がつきました」

(ルポタージュ出生前診断・終章 いま考えなくてはならないこと 269ページ)
 

3da05c8b.jpg
で、結論はどうなったんだろう...

 

終り

PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
管理人のみ閲覧可   
出生前診断

今回も興味深く拝見させていただきました。
出生前診断についていろいろと考えるきっかけになりました、ありがとうございます。

出生前診断は、ほとんどの人が「異常があったら中絶しよう」と覚悟を決めて受けているのではないと思います。
おそらく「異常なし」と言ってもらい、安心するためでしょう。
(もちろん、今の環境では障害児を産み育てることはできないという切迫した事情を持つ方もいらっしゃるのは知っています)
しかし、実際そういう技術がどうして開発されたかというと、やはり「障害児であることを事前に知り、中絶するため」ではなかったでしょうか。
であるからこそ「検査結果は異常ではあったが、敢えて産む」という矛盾したケースも出てくるのでしょう。
出生前診断をすること、中絶をすることについての善悪を判断する術を私は持ちません。
しかし、出生前診断は命の選別をするための技術であるということだけはきちんと理解したいです。
月餅 2012/09/26(Wed)18:01:28 編集
re:出生前診断
月餅さん

いつもコメント有難うございます。
どちらにせよ、確固たる意志の持ち主は少ないと思います。安心したいから受けた人は大勢居ることでしょう。検査にひっかかれば悩む。医療者からすると、受検する前に考えてよと言いたくなりますが、迷う人は後を絶たないと思います。人は悩むものだと、腹を括るしか無い。

仰る通り、出生前診断は"命を選択する"ためのものです。もっとハッキリ言えば、障害児を産まないためのもの。何も今に始まったことではありません。40年以上の歴史を持つ羊水検査、簡便なトリプルマーカー・クアトロマーカー、これすべて障害児を産まぬための検査といえます。cell-free plasma DNA検査は、あくまでその延長線上のものであり、実際は新味に欠けます。

これまでも生命の選択をしてきた訳です。それを善しとしてきた。ならば、正確な検査の出現は、喜びこそすれ、悲しむべきこと、憂うべきとこでは全くありません。
豚児 URL 2012/09/26(Wed)21:51:21 編集
re:re:出生前診断
出生前診断と書きましたが、より正確に言えば、胎児の血清診断は生命を選ぶためのものということです。http://tonjihdh.blog.shinobi.jp/Entry/12/ このエントリにも書きましたが、胎児治療は広く行われています。治療には診断が必要ですから、出生前診断のある種のものは、治療のために存在するといって好い。しかし血清マーカーは違います。トリプルマーカー、クアトロマーカー、そしてcell-free plasma DNAは、生命選択がその目的です。そこをごまかしてはいけないと、私も考えます。
豚児 URL 2012/09/26(Wed)22:02:03 編集
天才障害児、そしてパーフェクト・ペアレンツ
いつも丁寧なレスをありがとうございます。

「障害児でもこんなに才能豊かな人がいる」という話は、ダウン症よりも自閉症スペクトラムで語られることが多い印象があります。
「自閉圏の子たちは傑出した才能を持つものがいるので、その遺伝子を絶やすべきではない」という論です。
しかしダウン症がそうであるように、自閉圏もまたそれに属している人たちのほとんどはハンデだけがあり特別なスキルも獲得せぬまま一生を終えます。
世界は障害者たちを必要としているとは思えません。
それでも生きる権利を周囲が認めるという形は望めないのでしょうか。
「特殊な才能を提供するから大切にする」という意見は、容易に「役に立たなければその限りではない」というところに転落します。

パーフェクト・マザー、パーフェクト・ペアレンツに関してですが、「たとえどのような障害を持つ子であっても妊娠したからには産み育てるべき。その覚悟がないものは子を作るべきではない」という強い親を世間は望んでいるのを感じます。
「健常児であれば育てられるが、それ以外は無理」という人はそもそも親になる資格がない、という考え方です。
子を生む覚悟をした以上、どのような茨の道も自己責任として引き受けよと。
これには一応の整合性があります。
しかしこの考えが世間の主流になるとますます少子化が進む、という以上に社会が目指す人間の平等にひどく反しているという点で心情的に受け入れがたいです。

いろいろ書きましたが、中絶の問題が複雑なのは「胎児の道徳的地位はどうなっているのか」という点です。
医師が胎児の異常を親に告げたなら確実に中絶になる場合、医師は胎児の命を守るためにそれを告げないということは許されるでしょうか。
法的、あるいは職業上の倫理コードとはまた別の話として、一人の人間である医師が、また一人の人間である胎児を守るためにそのプライバシーを秘するのは果たして悪いことなのでしょうか。
法的には胎児は一人の人間ではない。
しかし、多くの人は胎児を人間のように想っています。
ごく普通の人間に対して怪我や病気をしないようにと願う気持ちで胎児にも異常がないようにと考え、普通の人間が大怪我をしても「助かりますように」と祈るように、できれば異常のある胎児もこの世で生まれ育って欲しいと感じています。

その一方で、先生のおっしゃった「すくすくと育つ我が子と暮らしたい」という願いも否定されるべきではありません。
「子どもが欲しい、障害児は育てられないが健常児なら育てられる」という人々の、ささやかな願望を社会が切り捨てるべきではないと思うのです。
月餅 2012/09/27(Thu)16:00:02 編集
Twitter

最新コメント

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
Template by Crow's nest Crow's nest 忍者ブログ [PR]