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不謹慎系フィクション医療ブログ
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豚児(とんじ)
 
生真面目な内科医。ヘブンズドアホスピタルの面々に翻弄されるかわいそうな人。

黒金(くろがね)
 
金髪ガン黒内科医。基本的に根性が悪い。 一方、面倒見が良いとも言われるが...

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明るく鷹揚な人柄で、部下から慕われる救急部のリーダー。無尽蔵の体力で日夜診療に当る好漢だが、困った一面も。

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ヘブンズホスピタル外科部長。大変おおらかな性格。真摯な診療態度からついたあだ名はDr. Honesty。信条は「嘘のない医療」

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3719b03c.jpeg

前回の要約

尊厳死法の原案は、まとめると以下のようなものでした。


5af01918.jpeg【合法化したいこと】延命措置の不開始・中止
【対象者】終末期にある15歳以上の患者
【要件】任意の決定であること
    適切な治療を尽していること
    二人以上の医師が判定すること




医師といえど過つ存在です。また人の生命に関わることですから、慎重にことを決しねばなりません。そこで、不治であり死期がちかいことについて、二人以上の医師が判定すべきことが謳われているのです。適切な治療を尽していることも同様です。そして、


927c6049.jpeg
部下が自分の判断に
そして自分が上司の判断に
口を差し挟めるのかね?
要するに独立性は保たれるのかってこと


このように、医師の判断の独立性に疑念が生じた場合には、


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Oh! I see
そこに疑念があるのなら
他院の専門医に頼めばよいの
デス
患者にはその権利がありマス



のだと言います。それはもっともな話です。
ですが、


927c6049.jpegなるほど、もっともだ
ガン患者で尊厳死を望む者なら
あらかじめそうすればイイ
のだからな
じゃあ脳卒中寝たきりで認知症、心不全、腎不全の
患者は
どこの誰に相談すべきなんだ?


5af01918.jpeg

ですから同じ病院でもヨソの病院でもいいので
専門医に判定してもらえば済みマス



927c6049.jpeg
その専門医は、脳卒中専門医なのか
リハビリ専門医なのか神経内科医なのか
循環器科医なのか腎臓内科医なのか、いったい誰よ?
エライ先生方全員に往診来て貰うのか?来ねーよ、そんなことのために


多くの疾患を抱える高齢者は、一つ一つの疾患は重症でなくとも、併せ技で生命を削ることもあります。各疾患ごとに専門医の意見を仰いだとて、目の前の患者さんの回復可能性や余命について、果してよい示唆が得られるでしょうか?またすべての疾患について、片っ端から専門医を受診し、全身精査を進めるのも、現実的とは思えません。かといって、平生の容体をよく知る医師(多くは開業のかかりつけ医)といえど、全ての診療科に通じている訳ではありません。専門分野以外では、適切な治療を尽したかどうか、不確定要素が残ります。
高齢者の尊厳死については、法案の運用を厳密にすると、膨大なコストがかかり、安らかな死を迎えるという趣旨から遠ざかる憾みがあります。逆に法案運用を簡素に済ませば、判断の独立性や専門性が等閑になり、二人以上の医師で確認することが空文化される虞があります。
 

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な、何か話がグダグダですね
ペテロの話だけだと理路整然としていたのに

 











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次だが




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ま、まだありまスカ?
言葉遊びは本意じゃありませんヨ
もっと実践に即した話をしたいデス...




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ひひひ
まあそう言うなよ
院長肝いりのペテロ大先生だ
オレみたいなチンピラにも智慧を授けて下さるんだろ?




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も、もちろんデス!
逃げも隠れもしまセン





927c6049.jpeg

それは結構
じゃあ訊くが、尊厳死要件でいう適切な治療だが
具体例で教えてくれないか?




5af01918.jpegオッケー!
たとえば、がんの患者さんデス
がんに応じた治療―手術や抗がん剤、放射線治療を
十分な経験を持つ医療者の手によって
受けていることデス



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なるほど
他には?





5af01918.jpeg
虚血性心疾患であれば、
再灌流療法やβ遮断薬、抗血小板薬などの薬物療法
高血圧、高脂血症、糖尿病などの管理、運動療法や禁煙教育も入りますネ
それもせずに、治療不可能、終末期だとするのは許されないことデス

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ガイドラインレベルの治療すら、しばしばなおざりにされているわ
ちゃんと足元を見直すべきよ


 

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なすべきことをキチンとなす
その為にも、二人以上の医師で確認するのが大事なんだね
何も死期が近いことの確認だけじゃない
出来ることはないか、良くなる方法はないかと
常に問い続けるべきだ



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複数の疾患を保つ場合、誰が舵取り役になるべきか
黒鉄先生の批判もわかりますけど
常識的に考えて、治療を尽すことに異議はないっしょ?




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なるほど、なるほど
いま挙げたようなことなら、俺にも否やはねーよ
いま挙げたようなことならばな



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んんん......
その言い方だと、まだ何かありそうですね?
どこか変なところがありますか?




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今度はこちらから事例を挙げようか
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者には
どんな治療が適切と言えるんだ?


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運動ニューロンの変性によって筋萎縮を起し
筋力低下や嚥下障害、呼吸不全を来す病気ですね
進行性で、現在のところ根治できません





5af01918.jpegまず治療を尽すためには
他の疾患と誤診しないことデス
頚椎症や脊髄腫瘍、皮膚筋炎、HTLV脊髄症、重症筋無力症などを
ちゃんと除外することから始まりマス
その上で、治療薬リルゾール内服を行い、リハビリテーション
療養器具の利用、介護体制の整備するのデス


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そうだな、まあ他には特定疾患の登録障害者手帳の取得も入るか

いよいよ嚥下障害が進み、メシが食えなくなったらどうするよ?
呼吸筋麻痺から呼吸不全になったなら



5af01918.jpeg

もちろん本人の意思を確認してからでスガ
嚥下障害には胃瘻を造設して栄養補給を行い
呼吸不全には気管切開人工呼吸器導入とを行いマス


 

52015499.jpeg
その時期には会話が困難でしょうから
意思伝達装置も必要ですね
こちらは操作に慣れる必要があるので
早めの導入が理想的ですけど



c23fbe4f.jpeg
まあ妥当だな
じゃあもう一つ
年寄りで認知症が進み、メシが食えなくなったし誤嚥もあって
自発性も低下し寝たきりになった場合は
何が適切な治療なんだ?


7745a89e.jpegHaHaHa !
何を言うかと思えばそんなことでスカ?
その他の場合と同じですよ
治せる病気をちゃんと診断するコト、これが出発点デス
そして治せる病気がないのなら
年齢を考慮して自然な格好で看取る
のデス



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あれ?
メシ食えないんだぜ?
胃瘻はやらねーの?



5af01918.jpeg
What ?
正気でスカ?治せる病気がないのなら
胃瘻を造って栄養補給しても意味がありまセン!
自力で食べられなくなれば、それは寿命というものデス



927c6049.jpeg
ああ?
ALSも治らない病気なのに、胃瘻造るって言ってただろうよ?
何で年寄りは看取りなんだ?




5ea6569a.jpeg
Youもわからない人でスネ!
年齢が違うでショウ?胃瘻を造っても先は長くありまセン
末期がん患者さんに胃瘻を造るのと同じデス
こういう論文もあるのです、もっと勉強して下サイ!



12681bed.jpeg

進行期認知症患者に、チューブや胃瘻で栄養しても
生命予後や誤嚥性肺炎の発生、QOLなどには
改善が認められない
という論文ですね




64103ae1.jpeg

うん
じゃあ高齢者に胃瘻はなしで無問題!





ac96b9f6.jpegもうオメーわ黙ってろ!
その論文は結構有名だがな、『チャレンジ!非がん疾患の緩和ケア』によると
後の研究では
経管栄養後の1年生存率は10〜90%と幅が大きく
信頼出来る研究結果はない
ということだぜ


 

688a324b.jpeg


そ、それは本当でスカ!?




927c6049.jpeg
諸家の報告では1年生存率40〜60%が多く
無治療で1〜2週間、末梢輸液で2〜3ヶ月くらいの予後だろ?
胃瘻に生命予後改善効果がないとは言えねえよ


 

7e34dc43.jpeg

たしかに
胃瘻で元気になったり、誤嚥性肺炎が減る人はいますね
あの論文ほどには予後が悪くないという印象です



 

927c6049.jpeg
ぶっちゃけ

ヤってみないとワカンねー

ってところだろ、胃瘻に限らず

 

688a324b.jpeg
し、しかしやな
胃瘻みたいな特殊な治療
年寄りにしてエエんか、っちゅう話ですわ
正味の話が


 

12681bed.jpeg


あ、関西弁





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特殊もへちまもねーだろ
ALS患者には胃瘻が適切な治療に入る
そういったのはオメー自身だろーが




5af01918.jpeg
Sorry !
ハハハ、黒金君はとんち問答が好きでスネ
もっと素直になった方がベターですヨ




927c6049.jpeg適当ぶっこいてごまかすなよ
胃瘻造ったら余命延長が期待できるし、他の疾患では通常治療として行われている
なら、弱った年寄りを胃瘻造らず看取ることは
不十分な治療で死なす
ことになるんじゃねーのか?
尊厳死の要件を満たさないよな?


 

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ま、まあ
そういう考えもありますね......
またまた話がグダグダになってきたなあ
末期がんの場合なら、こういうことはないのに




679a7e9d.jpegおー
いいこと言うじゃねーか
高齢者終末期論がグダグダになる原因の一つはな
根治不能がんと同様の予後予測が難しいことにある
積極的に治療すれば低空飛行を続けることもあるし
見切るとそこでおしまいなこともな


1aa7470d.jpeg


あきらめたらそこで人生終了だよ
ですね♪



c23fbe4f.jpeg

それはおいといて(スルー)
根治不能がんと認知症・加齢との経過は
だいたいこの図の通りになる




7b90f196.jpeg0693b279.jpeg















7e34dc43.jpeg
がん患者さんの場合は
死の1~2か月前まで比較的落ち着いた時期が続き
そこからガタガタっと悪くなる

また根治不能のことは、意識や知的機能に問題ない時期に知らされますね




52015499.jpeg
認知症や加齢なら
徐々に全身の機能が低下し、感染症や軽度の脳血管障害、転倒・骨折を起しつつ
良くなったり悪くなったりしながら、死を迎えるパターンよね

 



c23fbe4f.jpegああ
いつから終末期なのかがわからん
治療すれば感染症や脳血管障害を乗り越え
胃瘻造設で予後延長が見込めることもある
しかも容体悪化の遙か前から、意識レベルも知的機能も低下していることが多い

 

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経過が違うト?




927c6049.jpegわかってんじゃねーか
がんとそれ以外の疾患とでは、経過が大きく異なる
がんをモデルとした終末期の扱いは、様々な齟齬を来すってこった
件の尊厳死法案では、複数の病気を抱えた虚弱老人をその対象とすることは出来ない
法案の運用によっちゃ、現場が大混乱に陥るかもな


688a324b.jpegI see ...
しかし、終末期が厳密にわからない、余命延長を期待できるという考えは
とにかく長生きが無条件で良いという思想に侵されていませンカ?



c23fbe4f.jpeg


ほう
続けてくれよ




つづく

※この物語はフィクションです

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