前回の要約
日本尊厳死協会や尊厳死法制化議連が中心となり、尊厳死法制化を進めています。しかし日常臨床の現場では、法制化されていない今も、看取りに関連して、大きなトラブルに見舞われる事例は少ないように思えます。
というのもうなづけます。しかし、
川崎協同病院事件では、主治医の呼吸器科医に執行猶予付き実刑判決が下っています。司法による訴追は、医療者を不安にさせるだけでなく、終末期医療を大きく歪めてしまいます。
正に羹に懲りて膾を吹く対応です。萎縮医療の典型例ともいえますが、果して医療者側に問題点はなかったのでしょうか?
司法介入による医療者の不安、萎縮医療、そして不適切な手続き・医療処置は、尊厳死のルールがないことに起因すると、彩文=ペテロ=上流医師は言います。尊厳死法制化はこのルール作りであると。ルール作りの意義は理解しながらも、何か釈然としないものを感じた黒金医師は、
実際の運用でスカ?
どこに問題があるのでしょうか?
何でも訊いてくだサイ
じゃあ遠慮なく訊くとしようか
尊厳死法制化の要旨をもう一度教えてくれないか
【合法化したいこと】延命措置の不開始・中止
【対象者】終末期にある15歳以上の患者
【要件】任意の決定であること
適切な治療を尽していること
二人以上の医師が判定すること
まずこの【要件】だが
二人以上の医師が判定することの意義は?
Oh!そんなことでスカ!
決っています
独断や誤診を防ぐためですヨ
To Error is Human
人は誤るものですカラ
なるほど
たとえば末期ガンと思しき患者でも
専門家に紹介して見解を訊くべきだというんだな?
当然デス!
人の生命がかかっているのですカラ
ミスは許されませんヨ
逆もまた同じで、末期ガンとして紹介を受けても
改めて自分の目で診断する必要があります
部下が自分の判断に
そして自分が上司の判断に
口を差し挟めるのかね?
要するに独立性は保たれるのかってこと
Oh! I see
そこに疑念があるのなら
他院の専門医に頼めばよいのデス
患者にはその権利がありマス
なるほど、もっともだ
ガン患者で尊厳死を望む者なら
あらかじめそうすればイイのだからな
じゃあ脳卒中寝たきりで認知症、心不全、腎不全の
患者はどこの誰に相談すべきなんだ?
ですから同じ病院でもヨソの病院でもいいので
専門医に判定してもらえば済みマス
その専門医は、脳卒中専門医なのか
リハビリ専門医なのか神経内科医なのか
循環器科医なのか腎臓内科医なのか、いったい誰よ?
エライ先生方全員に往診来て貰うのか?来ねーよ、そんなことのために
そ、それは...
いや、何も臓器専門医にかかる必要はありまセン
部下でも上司でも、あるいは近隣の開業医でも...
じゃああれか、不治の判断の独立性は保証されないし
専門医の診断も必要ないというわけだな?
何も臓器専門医でなければわからないわけではないでショウ?
不治であり、死期が近いことくらい、開業医でもわかるはずデス
専門外のことが、そうでない者にもわかるというのか?
人の生命がかかっているのに随分なことだな
尊厳死要件の一つ、適切な治療を尽していること、にも
悖る考えだぜ、それは、ヒヒヒ
黒金クンの議論はOn bullshitですネ!
言葉にこだわり過ぎて、実践的ではありまセン!
その人の主な病気についてだけ、専門家の意見を
求めればよいのデス
おいおい
ジジババにゃ併せ技一本が多いんだぜ
脳神経、心臓、呼吸器、腎臓、糖尿病
一つ一つは重症でなくとも、全部そろえば命を削る
主病がどれかなんて、やすやすと言えねーよ
それにな
不治であっても死期はおいそれとは判らねーし
死期が判るといっても今際の刻み
それも特定の疾患だけだぜ、俺の見たところは
な、何か話がグダグダですね
ペテロの話だけだと理路整然としていたのに
これでグダグダ?
グダグダなのは議論の方か
それとも尊厳死法制化の方か
これから明らかになるんじゃねーか?
ひゃひゃひゃ!
つづく
※この物語はフィクションです
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