忍者ブログ
不謹慎系フィクション医療ブログ
登場人物

豚児(とんじ)
 
生真面目な内科医。ヘブンズドアホスピタルの面々に翻弄されるかわいそうな人。

黒金(くろがね)
 
金髪ガン黒内科医。基本的に根性が悪い。 一方、面倒見が良いとも言われるが...

日野原重明(ひのばるじゅうめい)
 
ヘブンズホスピタル院長。 "あの人"に似るが全くの別人。 当年100歳の矍鑠たる翁。 座右の銘は"逝きかた下手"

有瀬太(ありせふとし)
 
モノ忘れ外来担当医。老練な診察は受診者に勇気と希望とをもたらす。

救急部長
 
明るく鷹揚な人柄で、部下から慕われる救急部のリーダー。無尽蔵の体力で日夜診療に当る好漢だが、困った一面も。

羽田直通(はねだ なおみち)
 
ヘブンズドアホスピタル内科部長。クセのある部下に悩まされる苦労人。

愛嬌ミチコ(あいきょうみちこ)
 
マジメで世間知らず、そして愛嬌がウリのテヘペロ女医。大富豪のお嬢様。

田原正直朗(たわらしょうじきろう)
 
ヘブンズホスピタル外科部長。大変おおらかな性格。真摯な診療態度からついたあだ名はDr. Honesty。信条は「嘘のない医療」

酒井 和民(さかい わたみ)
 
救急部レジデント。威勢の良さは某居酒屋並み。救急部と居酒屋と、ブラック業種つながりでは決してないんだから勘違いしないでよね!

鬼龍院花子(きりゅういんはなこ)
 
外来ナース。このご時世にナースキャップ着用を墨守する。笑顔で業界用語を連発する。愛読書は『実話時代』
ブログ内検索

カウンター

[24]  [23]  [22]  [21]  [20]  [19]  [18
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3719b03c.jpeg

前回の要約

尊厳死法の原案は、まとめると以下のようなものでした。


5af01918.jpeg【合法化したいこと】延命措置の不開始・中止
【対象者】終末期にある15歳以上の患者
【要件】任意の決定であること
    適切な治療を尽していること
    二人以上の医師が判定すること




医師といえど過つ存在です。また人の生命に関わることですから、慎重にことを決しねばなりません。そこで、不治であり死期がちかいことについて、二人以上の医師が判定すべきことが謳われているのです。適切な治療を尽していることも同様です。そして、


927c6049.jpeg
部下が自分の判断に
そして自分が上司の判断に
口を差し挟めるのかね?
要するに独立性は保たれるのかってこと


このように、医師の判断の独立性に疑念が生じた場合には、


5af01918.jpeg
Oh! I see
そこに疑念があるのなら
他院の専門医に頼めばよいの
デス
患者にはその権利がありマス



のだと言います。それはもっともな話です。
ですが、


927c6049.jpegなるほど、もっともだ
ガン患者で尊厳死を望む者なら
あらかじめそうすればイイ
のだからな
じゃあ脳卒中寝たきりで認知症、心不全、腎不全の
患者は
どこの誰に相談すべきなんだ?


5af01918.jpeg

ですから同じ病院でもヨソの病院でもいいので
専門医に判定してもらえば済みマス



927c6049.jpeg
その専門医は、脳卒中専門医なのか
リハビリ専門医なのか神経内科医なのか
循環器科医なのか腎臓内科医なのか、いったい誰よ?
エライ先生方全員に往診来て貰うのか?来ねーよ、そんなことのために


多くの疾患を抱える高齢者は、一つ一つの疾患は重症でなくとも、併せ技で生命を削ることもあります。各疾患ごとに専門医の意見を仰いだとて、目の前の患者さんの回復可能性や余命について、果してよい示唆が得られるでしょうか?またすべての疾患について、片っ端から専門医を受診し、全身精査を進めるのも、現実的とは思えません。かといって、平生の容体をよく知る医師(多くは開業のかかりつけ医)といえど、全ての診療科に通じている訳ではありません。専門分野以外では、適切な治療を尽したかどうか、不確定要素が残ります。
高齢者の尊厳死については、法案の運用を厳密にすると、膨大なコストがかかり、安らかな死を迎えるという趣旨から遠ざかる憾みがあります。逆に法案運用を簡素に済ませば、判断の独立性や専門性が等閑になり、二人以上の医師で確認することが空文化される虞があります。
 

22995bbe.jpeg

な、何か話がグダグダですね
ペテロの話だけだと理路整然としていたのに

 











927c6049.jpeg


次だが




688a324b.jpeg

ま、まだありまスカ?
言葉遊びは本意じゃありませんヨ
もっと実践に即した話をしたいデス...




927c6049.jpeg
ひひひ
まあそう言うなよ
院長肝いりのペテロ大先生だ
オレみたいなチンピラにも智慧を授けて下さるんだろ?




688a324b.jpeg

も、もちろんデス!
逃げも隠れもしまセン





927c6049.jpeg

それは結構
じゃあ訊くが、尊厳死要件でいう適切な治療だが
具体例で教えてくれないか?




5af01918.jpegオッケー!
たとえば、がんの患者さんデス
がんに応じた治療―手術や抗がん剤、放射線治療を
十分な経験を持つ医療者の手によって
受けていることデス



c23fbe4f.jpeg

なるほど
他には?





5af01918.jpeg
虚血性心疾患であれば、
再灌流療法やβ遮断薬、抗血小板薬などの薬物療法
高血圧、高脂血症、糖尿病などの管理、運動療法や禁煙教育も入りますネ
それもせずに、治療不可能、終末期だとするのは許されないことデス

12681bed.jpeg


ガイドラインレベルの治療すら、しばしばなおざりにされているわ
ちゃんと足元を見直すべきよ


 

7e34dc43.jpeg
なすべきことをキチンとなす
その為にも、二人以上の医師で確認するのが大事なんだね
何も死期が近いことの確認だけじゃない
出来ることはないか、良くなる方法はないかと
常に問い続けるべきだ



254c5416.jpeg

複数の疾患を保つ場合、誰が舵取り役になるべきか
黒鉄先生の批判もわかりますけど
常識的に考えて、治療を尽すことに異議はないっしょ?




927c6049.jpeg

なるほど、なるほど
いま挙げたようなことなら、俺にも否やはねーよ
いま挙げたようなことならばな



db9ff063.jpeg

んんん......
その言い方だと、まだ何かありそうですね?
どこか変なところがありますか?




927c6049.jpeg

今度はこちらから事例を挙げようか
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者には
どんな治療が適切と言えるんだ?


7e34dc43.jpeg



運動ニューロンの変性によって筋萎縮を起し
筋力低下や嚥下障害、呼吸不全を来す病気ですね
進行性で、現在のところ根治できません





5af01918.jpegまず治療を尽すためには
他の疾患と誤診しないことデス
頚椎症や脊髄腫瘍、皮膚筋炎、HTLV脊髄症、重症筋無力症などを
ちゃんと除外することから始まりマス
その上で、治療薬リルゾール内服を行い、リハビリテーション
療養器具の利用、介護体制の整備するのデス


c23fbe4f.jpeg
そうだな、まあ他には特定疾患の登録障害者手帳の取得も入るか

いよいよ嚥下障害が進み、メシが食えなくなったらどうするよ?
呼吸筋麻痺から呼吸不全になったなら



5af01918.jpeg

もちろん本人の意思を確認してからでスガ
嚥下障害には胃瘻を造設して栄養補給を行い
呼吸不全には気管切開人工呼吸器導入とを行いマス


 

52015499.jpeg
その時期には会話が困難でしょうから
意思伝達装置も必要ですね
こちらは操作に慣れる必要があるので
早めの導入が理想的ですけど



c23fbe4f.jpeg
まあ妥当だな
じゃあもう一つ
年寄りで認知症が進み、メシが食えなくなったし誤嚥もあって
自発性も低下し寝たきりになった場合は
何が適切な治療なんだ?


7745a89e.jpegHaHaHa !
何を言うかと思えばそんなことでスカ?
その他の場合と同じですよ
治せる病気をちゃんと診断するコト、これが出発点デス
そして治せる病気がないのなら
年齢を考慮して自然な格好で看取る
のデス



927c6049.jpeg

あれ?
メシ食えないんだぜ?
胃瘻はやらねーの?



5af01918.jpeg
What ?
正気でスカ?治せる病気がないのなら
胃瘻を造って栄養補給しても意味がありまセン!
自力で食べられなくなれば、それは寿命というものデス



927c6049.jpeg
ああ?
ALSも治らない病気なのに、胃瘻造るって言ってただろうよ?
何で年寄りは看取りなんだ?




5ea6569a.jpeg
Youもわからない人でスネ!
年齢が違うでショウ?胃瘻を造っても先は長くありまセン
末期がん患者さんに胃瘻を造るのと同じデス
こういう論文もあるのです、もっと勉強して下サイ!



12681bed.jpeg

進行期認知症患者に、チューブや胃瘻で栄養しても
生命予後や誤嚥性肺炎の発生、QOLなどには
改善が認められない
という論文ですね




64103ae1.jpeg

うん
じゃあ高齢者に胃瘻はなしで無問題!





ac96b9f6.jpegもうオメーわ黙ってろ!
その論文は結構有名だがな、『チャレンジ!非がん疾患の緩和ケア』によると
後の研究では
経管栄養後の1年生存率は10〜90%と幅が大きく
信頼出来る研究結果はない
ということだぜ


 

688a324b.jpeg


そ、それは本当でスカ!?




927c6049.jpeg
諸家の報告では1年生存率40〜60%が多く
無治療で1〜2週間、末梢輸液で2〜3ヶ月くらいの予後だろ?
胃瘻に生命予後改善効果がないとは言えねえよ


 

7e34dc43.jpeg

たしかに
胃瘻で元気になったり、誤嚥性肺炎が減る人はいますね
あの論文ほどには予後が悪くないという印象です



 

927c6049.jpeg
ぶっちゃけ

ヤってみないとワカンねー

ってところだろ、胃瘻に限らず

 

688a324b.jpeg
し、しかしやな
胃瘻みたいな特殊な治療
年寄りにしてエエんか、っちゅう話ですわ
正味の話が


 

12681bed.jpeg


あ、関西弁





927c6049.jpeg

特殊もへちまもねーだろ
ALS患者には胃瘻が適切な治療に入る
そういったのはオメー自身だろーが




5af01918.jpeg
Sorry !
ハハハ、黒金君はとんち問答が好きでスネ
もっと素直になった方がベターですヨ




927c6049.jpeg適当ぶっこいてごまかすなよ
胃瘻造ったら余命延長が期待できるし、他の疾患では通常治療として行われている
なら、弱った年寄りを胃瘻造らず看取ることは
不十分な治療で死なす
ことになるんじゃねーのか?
尊厳死の要件を満たさないよな?


 

22995bbe.jpeg
ま、まあ
そういう考えもありますね......
またまた話がグダグダになってきたなあ
末期がんの場合なら、こういうことはないのに




679a7e9d.jpegおー
いいこと言うじゃねーか
高齢者終末期論がグダグダになる原因の一つはな
根治不能がんと同様の予後予測が難しいことにある
積極的に治療すれば低空飛行を続けることもあるし
見切るとそこでおしまいなこともな


1aa7470d.jpeg


あきらめたらそこで人生終了だよ
ですね♪



c23fbe4f.jpeg

それはおいといて(スルー)
根治不能がんと認知症・加齢との経過は
だいたいこの図の通りになる




7b90f196.jpeg0693b279.jpeg















7e34dc43.jpeg
がん患者さんの場合は
死の1~2か月前まで比較的落ち着いた時期が続き
そこからガタガタっと悪くなる

また根治不能のことは、意識や知的機能に問題ない時期に知らされますね




52015499.jpeg
認知症や加齢なら
徐々に全身の機能が低下し、感染症や軽度の脳血管障害、転倒・骨折を起しつつ
良くなったり悪くなったりしながら、死を迎えるパターンよね

 



c23fbe4f.jpegああ
いつから終末期なのかがわからん
治療すれば感染症や脳血管障害を乗り越え
胃瘻造設で予後延長が見込めることもある
しかも容体悪化の遙か前から、意識レベルも知的機能も低下していることが多い

 

688a324b.jpeg


経過が違うト?




927c6049.jpegわかってんじゃねーか
がんとそれ以外の疾患とでは、経過が大きく異なる
がんをモデルとした終末期の扱いは、様々な齟齬を来すってこった
件の尊厳死法案では、複数の病気を抱えた虚弱老人をその対象とすることは出来ない
法案の運用によっちゃ、現場が大混乱に陥るかもな


688a324b.jpegI see ...
しかし、終末期が厳密にわからない、余命延長を期待できるという考えは
とにかく長生きが無条件で良いという思想に侵されていませンカ?



c23fbe4f.jpeg


ほう
続けてくれよ




つづく

※この物語はフィクションです

PR
Comment
name 
title 
color 
mail 
URL
comment 
pass    Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメントの修正にはpasswordが必要です。任意の英数字を入力して下さい。
管理人のみ閲覧可   
Twitter

最新コメント

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
Template by Crow's nest Crow's nest 忍者ブログ [PR]